世界が終わる音を聴いた
指に伝わる押さえた弦の感触。
楽器から一番に耳に届く音。
昔みたいに指は軽やかには動いてはくれないけれど、案外体は、というか、感覚が覚えている。
次にどう進行していくのか、どう動かすべきか分かっているのに動かせないもどかしさ。
これが流れてしまった時間ということだ。
けれど何故だろう。
心に浮かぶのは悔しさより、楽しさの方がわずかばかり比重があるようだ。
気がつけば夢中になっていた。
自室に戻ったのが8時前で、いつの間にかもう11時になろうとしている。
ギターをケースに一度戻して、ベッドに横たわる。
夜通し起きていたのだ、少しは体を休めなければ。
けれど……、こんなに高揚する気持ちは久しぶりだ。
本気で夢を掴むには遅すぎた。
だって私の終わりはもう見えている。
だけど、今じゃなきゃもう、音楽から遠ざかってばかりだった。
本気で音楽を好きな気持ちと、歌いたいと言う気持ちと向き合うことに、遅すぎると言うことはなかった。
いくら終りが見えていたとしても。
昂った気持ちのままでは眠れないかもしれないと思っていたけれど、本当に体というのは実に正直なもので、すんなり睡魔をつれてきた。
期限つきの私の人生、残りの時間はあと数日。
この日常は、ここに生きていられる普通の日々は、奇跡だ。