偽装結婚いたします!~旦那様はイジワル御曹司~
「柳原さんて、彼女いないんですかぁ~?
うそ~?!イケメンなのに彼女いなくて独身?!」
名前もまだはっきりと覚えていない同僚の女が、仕事を終えて帰り支度をしている俺に気安く話しかけてくる。
転勤してきてから、俺はこれを何度女子社員から言われただろう。
特に歓迎会の酒の席では聞き飽きたセリフだ。
そんなにおかしいか?
35で結婚してないのが、そんなに珍しい時代か?
「結婚とか考えないんですか?」
「考えるも何も、相手がいないからな」
結婚、か。
俺が誰かと家庭を作り、子供を作って家族仲良く……
そういう落ちついた生活も、この先の人生ではアリだとは思う。
なんでだろう。
ふと柴本の顔が浮かんだ。
アイツは主婦が似合う顔だちだからかな。
なんで今アイツのことが頭に浮かんだのか、自分でもわからないが。
「じゃあ今度合コンしましょうよ~。
私、CAの友達がいるんです。美人揃いの合コン、楽しそうでしょ?」
35の独身男に恋人を作らせてやろうって、世話焼きなヤツもいるもんだ。
お節介とも言える。