偽装結婚いたします!~旦那様はイジワル御曹司~
「どこから聞いてたんですか?!」
「どこからって…そんなに聞いてねぇよ。
ただ、精子バンクを利用するとかしないとか、そういう言葉が耳に入ってきて。柴本は切羽詰まってんだなぁって思った」
盗み聞きをしていたわけじゃない、と柳原さんがバツ悪そうに取り繕う。
ワインではなく水をひとくち口に含んで、再び私に鋭い視線を送ってきた。
「切羽詰まってるなんて言わないでください。
私はただ一緒に生きていける家族が欲しいって思っただけです」
「だからそれ、俺がなってやるって言ってるんだ」
そんな重大なことを、冷静な顔で飄々と言わないでもらいたい。
どう言い返そうかと考えをまとめていると、自然と自分の口からため息がもれた。
「俺も35だからな。親が結婚しろってうるさいんだよ」
どうやら100%私のためだけのボランティア結婚、というわけではなさそうだ。
何か柳原さんにも事情がありそう…。
って、そりゃそうか。
何もないなら付き合ってない女と突然結婚しようだなんて思わないだろう。