偽装結婚いたします!~旦那様はイジワル御曹司~
「わかった! 響介あなた、すぐに離婚するつもり?」
「……は?」
「お母さんが嫁いだ時代はね、『嫁の腹は借り腹』なんて言われたもんよ。
子供さえ産んで置いていくなら、いつ離婚しても構わない、って」
突然なんてことを言い出すんだ。
というか、いつの時代の話なんだか。
呆気にとられている私とは違い、隣にいる柳原さんの表情が一瞬で険しいものに変わった。
「酷い妄想だな。すぐに離婚だなんて!
まだ結婚もしてないのにそんなこと考えるわけないだろう。
母さんにとっても息子の結婚だぞ? もう少しまともな思考でいてくれよ」
「だって……じゃあ式も披露宴も堂々とやったらいいじゃないの!
お母さんの身にもなってよ。親戚に示しがつかないわ。
うち、元公家で元伯爵家なんだから!」
「………」
「美衣子さんの側は出席者が誰もいないかもしれないけど、それはどうにでもなるわよ~。
ほら、劇団のエキストラか何か雇って、親族の席に座らせとけばいいことだわ」
「母さん!」
「……何よ……怒鳴らないでよ……」
お母様の表情を見ていると、何も悪いことは言っていないのに何故怒鳴るの?といった感じだ。
私としてはここまでくると、自分のことなのに自分のことじゃないような…
すごーく異次元の話にすら思えてきた。