忘れたはずの恋
駅まで歩いて行こう、と思うんだけど歩く力も私には残っていないみたい。
途中の公園のベンチに腰を下ろした。
…全く、酷いよね。
あんな言い方、ないよね。
わざわざ、言いに来たのかな。
どうしてそっとしておいてくれないの。
ああ、また視界が歪む。
タオルで顔を抑えた。
それとほぼ同時にパラパラと重苦しい厚い雲の隙間から雨が降り始めた。
もう、どうでもいいや…。
「…さん?」
雨音の合間を縫って誰かの声がする。
一体、何時間ここに座っているのだろう。
夏とはいえ、体が冷たくなっていることにようやく気が付いた。
「吉永さん?」
目の前に足が見える。
顔を上げることも出来ないくらい、もう体力がなかった。
「こんなに濡れて…大丈夫ですか?」
頬に温かい感触を感じる。
大きな掌が私の両頬に添えられていた。
そして視界が急に上を向いた。
「…大丈夫じゃ、ないですね」
雨は暗闇から容赦なく降り続けていた。
藤野君は私を見てヤレヤレ、という表情を浮かべて首を竦めた。
「こんなところにいたら、風邪ひきますよ」
そう言って自分が首から掛けていたタオルを私の頭に被せる。
「これ、着てください。少しは保温対策になると思います」
自分が着ていた合羽を脱ぐと私に掛ける。
「…いいから」
断ろうとすると藤野君は首を横に振った。
「良くないです。
…だから、連れて帰ります」
そう言って私のカバンを肩に掛けると同時に。
お姫様抱っこ。
「…ちょっと!!」
「ここでずっと雨に打たれているなんて馬鹿な事は止めてください」
いつもは優しく笑っている藤野君の目が鋭くなった。
「僕の家、このすぐ近くなんです。
…吉永さんにセクハラで訴えられても、僕はこのまま連れて帰ります」
「…自分で歩くから」
藤野君の腕から逃げようとしても全然、敵わない。
逆にギュッと抱きしめられてしまった。
こんな細い腕なのに。
私を軽々と抱き上げてしまう。
「もう、歩く体力もないでしょ?
何時間、ここにいたんですか?
一体、何してるんですか?吉永さんらしくもない」
その口調に怒りも含まれている。
…情けない、こんな年下に怒られるなんて。
「…今日、来た人が原因なんでしょ?」
どうしてそれを?
目を丸くしていたら藤野君が大きくため息をついた。
「僕、配達から帰ってきてから休憩しようとしたら…総括と吉永さんと何処からかやって来た来客の方が3人で話している所に遭遇したんです。
…ちょっとヤバいと思って違う場所に行こうとしたら色々と聞こえてきて。
立ち聞きするつもりはなかったんですけれど、すみません」
藤野君はそう言うと
「とにかく、ここは雨が酷い。
愚痴は後でゆっくりと聞きます」
私をしっかりと抱きしめて歩き始めた。
途中の公園のベンチに腰を下ろした。
…全く、酷いよね。
あんな言い方、ないよね。
わざわざ、言いに来たのかな。
どうしてそっとしておいてくれないの。
ああ、また視界が歪む。
タオルで顔を抑えた。
それとほぼ同時にパラパラと重苦しい厚い雲の隙間から雨が降り始めた。
もう、どうでもいいや…。
「…さん?」
雨音の合間を縫って誰かの声がする。
一体、何時間ここに座っているのだろう。
夏とはいえ、体が冷たくなっていることにようやく気が付いた。
「吉永さん?」
目の前に足が見える。
顔を上げることも出来ないくらい、もう体力がなかった。
「こんなに濡れて…大丈夫ですか?」
頬に温かい感触を感じる。
大きな掌が私の両頬に添えられていた。
そして視界が急に上を向いた。
「…大丈夫じゃ、ないですね」
雨は暗闇から容赦なく降り続けていた。
藤野君は私を見てヤレヤレ、という表情を浮かべて首を竦めた。
「こんなところにいたら、風邪ひきますよ」
そう言って自分が首から掛けていたタオルを私の頭に被せる。
「これ、着てください。少しは保温対策になると思います」
自分が着ていた合羽を脱ぐと私に掛ける。
「…いいから」
断ろうとすると藤野君は首を横に振った。
「良くないです。
…だから、連れて帰ります」
そう言って私のカバンを肩に掛けると同時に。
お姫様抱っこ。
「…ちょっと!!」
「ここでずっと雨に打たれているなんて馬鹿な事は止めてください」
いつもは優しく笑っている藤野君の目が鋭くなった。
「僕の家、このすぐ近くなんです。
…吉永さんにセクハラで訴えられても、僕はこのまま連れて帰ります」
「…自分で歩くから」
藤野君の腕から逃げようとしても全然、敵わない。
逆にギュッと抱きしめられてしまった。
こんな細い腕なのに。
私を軽々と抱き上げてしまう。
「もう、歩く体力もないでしょ?
何時間、ここにいたんですか?
一体、何してるんですか?吉永さんらしくもない」
その口調に怒りも含まれている。
…情けない、こんな年下に怒られるなんて。
「…今日、来た人が原因なんでしょ?」
どうしてそれを?
目を丸くしていたら藤野君が大きくため息をついた。
「僕、配達から帰ってきてから休憩しようとしたら…総括と吉永さんと何処からかやって来た来客の方が3人で話している所に遭遇したんです。
…ちょっとヤバいと思って違う場所に行こうとしたら色々と聞こえてきて。
立ち聞きするつもりはなかったんですけれど、すみません」
藤野君はそう言うと
「とにかく、ここは雨が酷い。
愚痴は後でゆっくりと聞きます」
私をしっかりと抱きしめて歩き始めた。