忘れたはずの恋
ますます私と藤野君は不釣り合いだと思う。

歳ばかり取ってしまった私より、若くてしっかりした人の方が良い。

でも、でも…!!



その考えを見透かされているのか、

「吉永さん、とにかく行ってみません?
それから今後の事を考えても良いと思いますよ」

吉田総括は微笑みながら私を見つめた。

もう…頷くしかない。

「精一杯頑張ります」

頷いた私を見て藤野君は嬉しそうに言った。

思わず、私は下を向く。



藤野君、君のその笑顔は。
私には眩しすぎる。
胸が苦しくて苦しくて仕方がない。
どんどん、藤野君に魅かれていく自分が怖い。

今、顔を上げれば…きっと泣いてしまう。

もう二度と恋なんて真っ平御免だと思っていたのに。

「あ、そろそろ私、帰ります。
相馬課長たちはさっき来たところだしもう少しいますよね?
吉永さん、私と一緒に出ます?」

吉田総括は私の心を完全に読んでいると思う。

「帰ります!」

出来るだけ、元気な声を出してみた。
涙腺はまだ、大丈夫。

顔を上げてゆっくりを周りを見る。

「じゃ、次の日曜、また皆で藤野を応援しに行こう」

相馬課長は明るく私に言ってくれた。

「はい」

私も笑顔で頷く。

「絶対に来てくださいよ~」

藤野君はまたニコニコと笑う。

「はいはい」

そんなやり取りを見た二人の上司たちはクスクスと笑っていた。



次の日曜、か。

来てほしいような、来てほしくないような…。

複雑。
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