忘れたはずの恋
ゆっくりとこちらをを振り返る吉永さん。

「先日、少しレースの話をしたと思うんですけど」

藤野の言葉に吉永さんは頷く。

「僕、夏に開催される鈴鹿8耐に出るんです。
大きい大会なので良かったら是非」

はあ?

吉永さんを本当に誘う?

まあ、でもここは…藤野の為に動いてみるか。

「ええっ!吉永さん、興味あるんですか?」

わざと叫ぶ。
吉永さんは目を丸くして

「えっ…あ、えっと」

彼女の目が泳いだ。

逃げる気か。

「集配で今、興味のある人に何人か声を掛けているんです。
一緒に応援に行きません?」

満面の笑みを吉永さんに向けた。

最近気が付いたんだけど。

吉永さん、何故か僕の笑みに弱いらしい。

「はい…いつでしたっけ?」

吉永さん、完全に僕の手中ですよ。

「7月の最終日曜日です」

藤野が答える。

吉永さんはスケジュール帳を出して、パラパラと捲った。

そして大きく息を吐くと

「何も予定はないです」

僕の隣に立っていた藤野が小さくガッツポーズをしている。

良かったね、藤野。
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