柊くんは私のことが好きらしい

完璧じゃないから、近づきやすい。面白そうなこともちょっと悪いことも一緒にやってくれるから、みんな真っ先に『いい奴』って言う。

慕って毎日のように『メグ』って呼ぶ。

私はその世界とがっちり繋がっていたわけじゃないから、いまだに『柊くん』のまま。


「見すぎじゃない?」

「うえっ!?」


びくりと肩を跳ねさせた私は、正面にいる咲と合わせた目を覆い隠す。


「見てない、見てません」

「いや、ガン見だったわ。顔だけ咲に向けて、視線は完全にメグだったから。話聞いてなかったでしょ。失礼な女だな」


指の隙間から、咲をうかがう。でも私の目は磁石みたいに柊くんへ引き付けられてしまう。


これは確かに……見すぎ、かも。


「ていうか、何? もしかしてさっきの気にしてんの?」


ぎくり。顔が強張ったのを咲は見逃さない。


「はー……めんどくさい。存在薄いのが何よ。悪いの? 印象薄くて誰かに迷惑かけんの?」


ぐさぐさと遠慮ない言葉にくじけそうになる。


存在が薄いんだから印象に残らなくても仕方ない。今更そんなことは気にならない。でも、


「そういうことでは、なく」

「だったら言わせときゃいいじゃんよ。ひまりだって先輩の顔なんかとっくに忘れてんでしょ。気にしすぎ。ハイ、他に何か?」


……気にしてる、のベクトルが違うんだよ。
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