柊くんは私のことが好きらしい


先日の土砂降りが嘘みたいな快晴の昼下がり。台風一過だね、と一緒にお弁当を食べていた咲の名前が呼ばれた。


「どうしてそんなに弁当を食べるのが遅いんだ」


ベランダから歩み寄ってきた小鷹くんは、半分ほど残っている咲のお弁当を見て、眉間にしわを刻んだ。


「はあ~? 関係ないじゃん。ていうか咲のこと名前で呼ぶのやめてくんない?」

「関係ある。実行委員は昼休みが終わる15分前に集合だと言われただろ。お前は苗字より名前のほうが短いんだから俺がエミって呼ぶのは当然のことで、」

「うっっざ!! いちいち真面目に答えなくていいし! 昼休み終わるまでまだ25分あるっての」

「22分な。5分前行動。常識だろ」

「はあ? 5分がどれだけ貴重かわかって言ってんの? これだから日本人は働きすぎとか言われんだわ! あーもうなんっで咲が実行委員なんてめんどいことしなきゃいけないわけ!? よりによってもっと面倒くさい小鷹と一緒! ありえないし! マジ無理!」

「無理でもやるしかないだろ」

「あーホントやだぁー。ひまり代わってよーっ」

「私バイトあるから無理」


昨日で終息したかに思えた咲の愚痴は、再び砲弾となって教室に降り注ぐ。これは学園祭が終わるまで続くな。


昨日のLHRで決めることになった学園祭実行委員。立候補制では誰も挙手をしなかったため、『決まらないと帰れないぞー』という担任のひと言に、小鷹くんが『やります』と声をあげた。


それはもう不機嫌そうに、大きなため息をこぼして。
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