柊くんは私のことが好きらしい
今でこそ学校は違えど、小学校、中学校のときは大変だった。
周囲からのごますりには辟易していたし、そのくせ全く似てないと嘲笑されるし、私が実は隠れ美少女だとかそんなミラクルだって起こらなかったし、これからも断じてない。
そんな16年間を過ごせば、自分の容姿くらい把握できるってもんですよ。
「ひまり? なによー。ジッと見て」
「チークの色変えたんだね」
「わかる!? そうなの赤に変えたの! ピンク飽きたからさー」
変じゃないよね?と鏡を覗き込んだふぅちゃんの長い髪がなびく。甘い香りがした。
「私に聞かなくてもわかってるでしょ」
「だって、ひまりは見る目あるっていうか。目ぇ肥えてるじゃん。だから似合うって言われると自信つくーっ」
ゆるく巻いたピンクブラウンの髪を両手で整えながら、ふぅちゃんは鏡に向かって満開の笑顔を作る。私はその隣で、鎖骨下まで伸びた自分の髪に手櫛を通す。
ちらり。鏡越しにふぅちゃんを見れば目が合った。
「違う、も~っ! あたしがひまちゃんに聞きたいことあったんだってばー!」
小さな両手でぎゅっと私の腕を掴んできたふぅちゃんが、再び上目を遣ってくる。
溜め息が出るほどのかわいさだ。まあ溜め息の理由はもうひとつあるんだけど。ふぅちゃんが私を“ひまちゃん”と呼ぶときは、割とろくなことが起こらない。