mariage~酒と肴、それから恋~《5》
「え?」

弾かれるように顔を上げたら、成海さんは、先ほどとはうって変わって真面目な表情で私を見ている。

突然の申し出。


成海さんの口から発せられた言葉に、すぐ理解ができなくて、唇を凝視した。

その唇がまた声を発する。


「月子と梅酒を一緒に飲みたいんだ」


ピリッと空気が張りつめた。

今まで、私が作った梅酒を一緒に飲んだことはなかった。帰りが車だから。


でも今さら急に一緒に飲みたいだなんて…。

それって、どういう意味があるの?

心臓が勝手にドクドクと強く脈打つ。


動揺しそうになるのを堪えながら頷く。

私にも、今日来た理由があるんだ。


「…私も、成海さんと一緒に飲みたい梅酒を持ってきてたんです」


持参した梅酒を紙袋から取り出す。

「これ、最初に成海さんにあげた梅酒です。
そこから10年熟成させてきたんです」


最悪、車中泊かなと思ってたから、泊まれと先に言ってくれて都合が良い。


「ほんとに?すごいな10年か」

成海さんは、ビンを手に取り感慨深そうに眺めた。

「1年ものとは全く色が違うな。濃くて深い」
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