恋愛セラピー
ジャスミンの愛

理人くんと、恋人になった次の日。


誘惑しておきながら寝落ちしてしまった私に恨みがましい目を向けながら、理人くんは病院に出勤していった。


そんな理人くんを見送ってから、私は同期の吉田淳美に連絡をした。


返信の内容を見て、支度を整えてから理人くんの家を出る。


向かった先は、私の勤務先であるT記念病院だ。お昼時に呼び出したりして申し訳ないけど、理人くんが帰ってくる前にどうしても済ませておきたい。それに、いつもしてもらってばかりだったから、ご飯も作ってあげたい。


指定しておいた人気のない病院の非常階段を上っていくと、すでにその人の姿はそこにあった。


「すみません、岩田先生。昼休みに呼び出したりして」


声をかけると、白衣姿で壁に寄りかかっていた岩田先生が、私を見て姿勢を正して眉を下げる。


「いや、いいよ。なんの話かも分かってるし」


ため息をついて、初めて見る弱気な顔を見せる岩田先生に本当に申し訳なくなる。


午後も仕事があるのに、私の都合で振り回してしまっているという自覚はある。


それでも理人くんの恋人になった今、岩田先生の告白をそのままにしておくことが嫌だった。私は彼に、誠実でいたい。


完全に私の都合、自己満足。本当に申し訳ないと思いながら、深く頭を下げる。

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