恋愛セラピー


「あ、結構カモミールが香ってきたね」


爽やかなりんごのような香りとともに、理人くんが私のことを抱きしめる。その腕に抱かれて、ホッと息をついた。


「おやすみ、皐月。愛してるよ」


愛おしそうに私を呼ぶ声、愛の言葉、優しい手。彼のすべてが私を癒して、満たしてくれる。


アロマよりも、私にとっては理人くんに触れてもらうことがなによりの癒しだ。


きっと、最初からそうだった。彼の手は特別だ。その手には私への愛があふれている。


「私も……愛してるよ」


これから始まる、彼と過ごす日々を想像する。


爽やかな香りとぬくもりに包まれて、私は幸せな気持ちで眠りについた。


「あー……やばい。俺、めちゃくちゃ浮かれてるな。カモミールの効果なしだよ。寝れそうにないわ。普段キリッとしてるからな、この無防備な顔、やばい。トリートメントしてるときとか、触れるのはよかったけど、何回もイタズラしそうになって我慢するの大変だった。今日は、この寝顔を堪能しようかな……」

私は夢を見ていた。王冠をかぶった理人くんが、ガラスの靴を持って私のところに訪ねてくる夢を……。


そんな、絵本の中の物語のような夢を見ていた私は、起きたときに私を見つめていた理人くんに赤面してしまった。











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