恋愛セラピー
ローズの求婚
「うーん、こっちがいいかな。いや、やっぱりこっちかな。これでお願いします」
「かしこまりました。では、こちらへどうぞ」
にこやかに微笑んだ、美人の店員さんに案内されて、広すぎる試着室に入る。広すぎて、ちょっと落ち着かない。
「お困りのことがあれば、お声をかけてくださいね」
素敵な笑顔を崩さないまま、店員さんはそっとカーテンを閉める。閉じられたカーテンの中で、理人の選んでくれたそれを見つめてふうっと息を吐く。
理人と想いを通わせてから二週間。明日は私の誕生日だ。
「迅速に進める」と言った理人の言葉に嘘はなく、その一週間後には、「プロポーズデートをしよう」とお誘いがあった。
本当はサプライズ的なことをしたかったみたいだけど、こうなったらもう無理だと判断したらしい。
ちょっと申し訳ないけど……理想と現実は違うものだよね。私としては、どこかに泊まるっていうことだけしか知らないからすごく楽しみだ。
誕生日に休みをいれるような年でもないし、恋人ができるなんて思っていなかったから今日は普通に仕事だった。