恋愛セラピー
ネロリの安らぎ

「ここに糸かけて……そうそう。結構進んできたね」


「うん、優秀な先生がついてるから。なんとかね」


理人と十年振りの再開を果たしてから早、半年。


女子の憧れを全部詰め込んだような、ロマンチックすぎるプロポーズから四ヶ月が経ち、季節は秋へと移り変わった。


もうすぐ季節は冬。私は甘い香りのする部屋で約束していた手編みのマフラー作りに悪戦苦闘している。


必死に毛糸と格闘している私の横で、スムーズに手を動かしている理人に感心してしまう。


私のために身につけてくれた特技だけど、こういうのやっぱり好きなんだろうな。好きこそものの上手なれっていうもんね。


私も好きなんだけどな。好きじゃ、どうにもならないってほど不器用ってこと?


私は器械出しはできても、絶対に外科医にはなれないな。そういう意味でも、理人は外科医に向いていたんだろう。縫合とか上手そうだな。


ちなみに彼は、私がマフラーに苦戦しているあいだにフリンジがついたかわいいポンチョをあっという間に編み終えた。


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