恋愛セラピー
エピローグ

本物のラベンダーの花の香りは、やっぱり精油の香りとは全然違う。私は生のラベンダーの香りのほうが好きだ。


甘くて爽やかなその香りをクンクンと嗅いでいる私を見て、理人はクスッと笑った。


「皐月、ラベンダースティック作るんでしょ? いい?」


「あ、はい。すみません。いい匂いだなと思って」


「皐月、十年前も同じことしてたよ」


クスクスと笑われて、成長していない自分に恥ずかしくなってしまう。だって、この香りが好きなんだもん。


「じゃあ、始めるよ。もう一日、乾燥してあるから花をまとめてあるゴムをとって、そのゴムがあった部分にリボンを縛って……そこから茎を折り返して……」


言われた通りに作業を進めていくけど、あまり手先が器用じゃない私にはなかなかそれが難しい。


「あ、理人……ここ、緩んじゃった」


茎に通していたリボンが緩んでしまって、助けを求める私に、理人は自分の作っていたものをテーブル置いて立ち上がる。もう完成しそうだし、早すぎる。


「ああ、ちょっと貸して……」


私の手からラベンダーを取ろうとした理人が、私の手に触れて……ぎゅっと私の手を握った。これは、十年前と同じだ。


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