恋愛セラピー
それに驚いて、顔を上げる。真剣な顔をした理人と目が合って、心臓がドキドキしてくる。やっぱり理人って、すごくかっこいいな。
「……皐月さん、俺ね……」
「ハックシュ!」
恐らく、十年前と同じように愛の告白をしようとしていたであろう、理人の言葉をかわいらしい、だけど大人顔負けのくしゃみが遮った。
思わずそのくしゃみをした主を振り返る。でも主は、スヤスヤと気持ち良さそうに眠っていた。それを見て、理人と顔を見合わせてぷっと吹き出した。
「あーあ。せっかく十年前の愛の告白をもう一度やり直そうと思ったのに、まさかの邪魔が入ったな」
「すごいタイミングだったね」
額をくっつけて、クスクスと小さく笑い合う。そのままチュッと唇にキスをした理人が、私の髪を優しい手つきでなでる。
「好きだよ、皐月。十年前より……いや、昨日よりずっと好き」
邪魔された告白をやり直した理人に頬が緩む。意地でも言いたかったんだな。私も応えなきゃ、理人の気持ちに。
私はもう、この人がいないと生きていけない。