恋愛セラピー

私は心のどこかで、まだ期待しているんだ。


いつか、私だけの王子様が迎えにきてくれるんじゃないかって、そんなことを夢見ている。


三十歳にもなってそんな夢を見ているなんて、本当に自分でも呆れるくらいに痛い。でも別に夢見るくらいは自由なはずだ。


深いため息をつくと携帯が鳴って、メールが届いたことを知らせる。


なんとなく、重くなってしまった気分を振り払いながら携帯を操作すると、メールはさっき連絡先を交換したばかりの理人くんからだった。


『今日はありがとうございました。理香から連絡もらいましたけど、本当に遠慮しなくて大丈夫です。とりあえず今日の報酬のデートの予定をたてたいので皐月さんの予定を教えてください』


デートって、やっぱりあれ本気だったんだ。それがお礼になるなら……って言っちゃったし、断るわけにはいかないな。


デートとか、いつぶりだろう。理人くんがどういうつもりなのはよく分からないけど、恋愛から遠ざかっている身としてはいいリハビリにはなるかもしれない。


膝を抱えてメールに自分の予定を打ち込んでいると、微かに花の香りが香った。


思わず目をつむって、その香りを逃すまいと息を大きく吸い込む。


そうしたら、少しだけ寂しさが紛れたような気がした。



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