キミの笑顔が見たいだけ。


「なんでお前がやめとけなんて言うんだよ。さては、春田さんのことが好きなのか?家に行ったってどういうことだよ!」


「はぁ?」


好きとか、ありえねーし。


好きとか恋とか、そんな面倒なもんに興味がなかった俺は今まで誰とも付き合ったことがない。


それどころか、誰かを好きになったこともない。


よく告られるけど、好きとかよくわかんねーし。


適当に振って、女子に絡まれるのが面倒だから学校ではわざと不機嫌オーラを放ってる。


その結果、周りの奴らにクールで無愛想で女嫌いっていうイメージが定着したらしい。


クールで無愛想。


まぁ、確かにそうだな。


女嫌い……。


ただ女に絡まれてキャーキャー言われるのがウザいだけで、女全般が嫌いなわけではない。


話すのが嫌なわけでもない。


他の女子のことはこんなに気になったりしないのに、春田だけはなぜか違う。


さっきだってあのままバス停に行くはずだったのに、雨宿りする春田の姿を見つけたら自然と足がそこに向いていた。


土砂降りの中、わざわざ道路を渡って春田に近づいた。


なんでそんなことをしたのか、自分でもよくわからない。


ただ気付くといつも俺の視界にいて、あいつはいつもニコニコ笑ってる。


知らず知らずのうちに、あいつの笑顔が可愛いとか思ってる俺がいて。


あんな風に笑いかけられたらやベーなって……ちょっと思ったり。


って、そんな俺はどうかしてる。


キモすぎだろ。


それにしても。


あいつ、大丈夫なのかよ……?



「正直に吐けよ!春田さんに気があるんだろ?」



なぜか、奴はからかうように俺を見つめる。


ニヤッとしてるところがなんとなくムカつく。


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