キミの笑顔が見たいだけ。


無事に卒業し博士号を取得した俺は、先輩理学療法士に指導されながら病院で働く毎日を送っていた。


眠りっぱなしの菜都に筋肉が固まらないようにリハビリを行い、またそれが脳への刺激にもなって回復を促す。


目覚めることだけを願って必死だった。


働き出してから1年。


菜都が眠ってから、ちょうど10年の月日が流れた。


忙しさに追われて、がむしゃらにやってきたけど……。


振り返ると、この10年は長かった気がする。


「そろそろいいだろ……?目、覚ませよ」


もう何十回、何百回そう願っただろう。


手入れされたツヤツヤの髪を撫でながら、反対の手で頬を優しく包み込む。


こうしていると菜都との思い出が蘇って胸が痛い。


「菜都……」


俺の気持ちは10年前と何ひとつ変わっていない。


お前のことが好きで好きでたまらないんだ。


だから早く目を覚ませ。


ふと我に返った時、本当にこれでよかったのかと思うことがある。


これで……よかったんだよな?


後悔はしていないはずなのに、なにかが足りない。


切ない。


苦しい。


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