現場系男子にご用心!?【長編改訂版】
じっと岡田さんが見つめる中、空白を埋めていく。
『真壁里緒奈』と書くのはもう最後かもしれないと、名前だけは慎重に書いた。

書いている途中、書く手が小刻みに震えて、字がミミズみたいになってしまったけれど、……いいのだろうか。

「……書けた」

ミスなく書けたことに安心して、ふう、と息を吐く。
私が一息ついている間に、岡田さんが私のハンコをインクに付けている。

「あとはハンコだよ」

「あ、ありがとう」

ぐぐっとハンコを押すと、岡田さんも安心したようにふう、と息を吐いた。

「……よし、完成だ。これから一緒に持っていこう」

「……本当に結婚、するんだね」

完成した婚姻届を見て、改めて思う。

岡田さんと結婚するんだ。
私、本当に岡田さんになっちゃうんだなぁ……。

「そうだよ?……いまさら嫌になった?」

「ま、まさか!そんなことは……。むしろ和宏くんが後悔しない?こんな女らしくない女と結婚して、失敗したなんて思ったりしない?」

結局、今でも料理などをやってもらっている状態の私である。
なんとか自分でも頑張ろうとは思っても、岡田さんのように手際よくはいかない。

それでも岡田さんは嫌な顔ひとつしないでやってくれるけど、いいかげん呆れているんじゃないかって、少し不安になってしまう。

「後悔してもいいくらい、今は里緒奈と一緒になりたい。まあ……後悔なんて絶対しないと思うけどね。それよりも里緒奈を好きだって気持ちの方が大きいから」

そう言うと、岡田さんは突然姿勢を正し、真剣な顔で私を見つめた。
いきなりのことで、少し私も身構えてしまう。

「……改めて言うよ。必ず幸せにする、俺と結婚して下さい」
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