現場系男子にご用心!?【長編改訂版】
ぼんやりと考えながら歩いていると、すうっと横に車が横付けし、止まる。
訝しげにその車を見ると、助手席側の窓が開いた。

「お疲れ。今帰り?」

乗っていたのはもちろんあの岡田さんだ。
工場で着ていた作業着を脱ぎ、代わりに背広を着ている。

このまま会社に戻るのだろうか?
いやはやメーカーの中で働く人は大変だ。

「家どこ?ついでだから送ってくよ」

職場に戻るのだと思っていたから、私は咄嗟に断る。

「すぐそこなんでいいですよ。岡田さんはまだ仕事中でしょう?私に構わずさっさと行ってください」

「基本この工場に来る時は直行直帰なんだ。だから今日は終わりなんだよ。寒いでしょ?すぐそこでもいいよ、送ってくから乗ってきなよ」

「そうなんですか。でもいいです。夕飯の買い物もしなきゃいけないんで」

そう言い放ち、岡田さんを尻目にすたすたと歩き出す。


すぐに後ろの方で、バタン、と車のドアの音が聞こえたかと思ったら、いきなりぐいっと肩を掴まれた。

カチカチ、とハザードランプが暗い夜道と岡田さんを一定に光らせている。


「じゃあ、やっぱりご飯一緒に行こうよ。おごるよ、なんでも」

「いきなり肩を掴まないでください、ビックリするじゃないですか」

「あ、ゴメン。でも掴まなきゃ逃げられちゃうから」

「なんですかそれ。というか、行かないし乗りません。なんであんまり話したことのない岡田さんと、一緒にご飯食べに行かなきゃいけないんですか。仲良くもないのにおかしいでしょう?」

「だから話したいんだよ、俺が。真壁さんのことを知りたいんだ、仲良くなりたいんだよ」

その言葉に、目が点になる。

……なにを言ってるんだろう。

私を知りたい?


「どういうことですか?」

「言葉通りなんだけど。……まあ、ここではなんだから、とりあえず乗りなよ。話はそれから」

「え?ちょ……!!」

あっという間に岡田さんは助手席のドアを開け、半ば強引に私を押し込めると、素早く運転手席に戻った。

そして、がちゃりとドアロックを掛ける。


「動くよ、ちゃんとシートベルト付けて」

「え?え?ちょっと!だから行かないって……!」

「お酒はいけるクチ?お気に入りの居酒屋があるんだ。そこに行こう」


私の話を無視して、岡田さんは車を動かした。
逃げられない私は、仕方なくシートベルトを付けるしかなくなったのである。

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