正しい男の選び方

その二、三日後の金曜日の夕方、葉子はまた、スパイス棚の辺りをうろちょろしていた。
先週にされたいたずらがまだ尾を引いていて、補充されてないスパイスなどがあるからだ。

「よくここで会いますね。金曜日はスパイスの在庫確認の日?」

声をする方を振り向くと、例のスパイス男が葉子を見て微笑んでいる。男の方も葉子のことを憶えていたらしい。

「今日は何をお探しですか?」

「ええと……カレー粉、ガラムマサラ、コリアンダー、それから……クミンとターメリック。カイエンペッパーもあった方がいいかな……」

これなら葉子にもわかる。

「今夜のメニューはカレーですか?」

営業スマイルで愛想良く話しかけた。

「そう。とっておきのインドカレーを食べようと思ってね。ああそうだ、ひよこ豆も買わなくちゃ」

男も陽気な声で返す。軽い会話はお手のものらしく、葉子はイタリア男のような洒脱さを感じた。

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