正しい男の選び方
「せっかくの松坂牛が台無しだ。こんなにたくさん、一人じゃ食べられないよ。」
男はすごくガッカリした声を出した。
「そうですか」
葉子は淡々と答える。
「責任取ってよ」
「責任?」
女をとっかえひっかえしてる責任をなんであたしが取らなきゃならんのだ?
葉子が訝しくおもっていると、男は続けた。
「仕事が終わったら、このステーキ、食べに来ない? オレはここの35階に住んでるからさ」
はあ!? ホントーに女なら誰でもいいのか? この男は。
葉子はムカついて、なるだけ冷ややかに聞こえる声を出した。
「私が、ですか? いえ、結構です」
「そんなこと言わずに付き合ってよ。食事なんて一人でするより二人でした方が楽しいんだから」
「いえ、私はステーキは食べませんので」
「最高級の松坂牛だよ」
しつっこい男だなー。
「遠慮しておきます」
葉子の声がだんだん低くむっつりした声に変わっていく。
なおも二人で押し問答をしていると、後ろに並んでる客が、コホンッと小さく咳払いした。
葉子が慌てて謝ると、男がそのスキに葉子に名刺を無理やり押し付けた。
「じゃ、待ってるからね」
葉子が何か言い返す間もなく、男は去って行った。