正しい男の選び方
「今日はずいぶん、シンプルな買い物」
「たまには旨い肉をじっくり味わうのもいいと思ってね」
「スパイスの効いた料理は飽きちゃいました? タイプに合わせて料理も変えるってワケね」
さらりと言った葉子の言葉を、しかし、女は聞き逃さなかった。
「タイプに合わせて?」
女の目がキラリと光る。男は少し狼狽した。
葉子は素知らぬ顔で続ける。
「ジャンバラヤもインドカレーも美味しかったっておっしゃってたじゃないですか」
男はぎょっとした顔をした。女が葉子に聞く。
「他の女にもこんなこと、してるの?」
「もー、毎週とっかえひっかえですよ。止めた方がいいかもよ、こんな男。確かに……見た目はいいかもしれないけど……誠実さのかけらもない。あなたで3人目よ、私が知っているだけでも」
「……信じられない!」
女は首を振ってバンとカウンターを叩くと出て行ってしまった。
「ちょ、ちょっと待てよ!」
男が慌てて追いかける。葉子はすかさず男に言い放った。
「締めて1万3528円になります」
「え!?」
男が一瞬どうしようか迷っている間に、女が店から消えた。
葉子は繰り返した。
「1万3528円になります」
男は財布からカードを抜き出す。女を追いかけるのは諦めたようだった。