正しい男の選び方
名刺によれば、男の名前は星野浩平というらしかった。何やらIT関係のベンチャーの会社を経営しているようだ。
恐らくは彼のケータイの電話番号であるらしい数字が手書きで隅の方にさらっと書き添えられていた。
仕事からあがって、葉子はどうしようか迷っている。
ほとんど知りもしない男の家に一人でのこのこやって来るのは、いかにも物欲しげな気がする。
それに、面倒なことになりそうな気もする。
このまますっぽかそうとも思ったが、次に顔を合わせる可能性を考えて、一応電話で断りを入れることにした。
すぐに浩平は電話に出た。
「終わった? 迎えに行くからエレベータのとこで待ってて。中央のエレベータじゃなくて東のはじっこにある直通のエレベータね」
それだけ言うと、電話はすぐに切れた。
断る間もなかった。
彼は、いつもこの強引さで女を口説き落としているのだろうか。
そんなことをぼんやり思っているうちに目の前に浩平が現れた。
さすが、高級タワマン。エレベータの速さも超高速。
浩平は葉子をさりげなく促してエレベータに乗り込ませる。おもむろにカードをかざして35階のボタンを押した。
部外者も使えるエレベータだから、上に行くにはカードが必要だ。それで、浩平はわざわざ下まで迎えに来てくれたに違いなかった。