正しい男の選び方

浩平に連れられて葉子の席に戻ると、政好のじっとりとした視線を感じる。葉子はにわかに緊張してきた。

「何やってたんだよ」

葉子が座る時に、政好が耳元でささやいた。

「……ちょっと、気分が悪くて休んでた。星野さんが呼びにーー」

葉子の言葉を遮るように、浩平がグラスを手にして乾杯の音頭をとる。

「今日は、是非、七面鳥を堪能していってください。僕も初めての挑戦なので、美味しいかどうかは保証出来ませんけど」

「ワールドフーズさんのだから美味しいだろー」

誰かが茶々を入れて、店長が嬉しそうに恐縮していた。

「では、かんぱーい」

「かんぱーい」

軽快なグラスの音が響き渡る。

あとは楽しくおしゃべりしながらのごはんとなった。皆のお皿には、七面鳥の切ったのが載せられているが、葉子の皿には代わりにミートローフのようなものが乗っかっている。

誰かが連れて来た子どもが興味津々で葉子の皿を覗いていた。

「何? それ?」

「んー、これね、お豆腐のミートローフ」

「何でお肉がないの?」

はあ、まただ、と葉子はうんざりしてくる。
しょっちゅう聞かれるのでいいかげん慣れっこだけど、どうしてサラッと流してくれないのだろう。
……子どもだしね、仕方ないか、とも思う。


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