正しい男の選び方

「んー、お姉ちゃんはお肉は食べないの、ベジタリアンだから」

「えええ! お肉食べなくていいの! いいなぁ。
 私なんか、いっつもお肉をしっかり食べなきゃいけません、ってママに怒られてるのに」

何、それ、私、悪い見本になってる? もう、勘弁してよ……
葉子は慌てて付け足す。

「そうだね。あなたはまだ小ちゃいから、大きくならなくちゃいけないもんね。私はもう大きくなっちゃったから」

「いいなあー、大きくなったらお肉食べなくてもいいんだー。早く大きくなりたいなぁ」

「じゃ、そのお皿のお肉、ちゃんと食べないとね」

葉子が言うと、女の子は頷いて、隣りに座っている母親らしい人に話しかけた。

「ママ、大きくなったらお肉食べなくていいんだよ」

「何、言ってるのよー、何でも食べなきゃだめなのよ」

「でも、このお姉ちゃん、お肉食べないんだって」

「え?」

そのお母さんらしい人が葉子の顔をじっと見つめる。それから柔らかな笑みをたたえて葉子に語りかけた。

「うちの娘、好き嫌いが多くて本当に大変なんです」

「……」

「今でもお肉を苦手にしてて」

「……」

「体も小さいから心配してるんですよ」

葉子はいたたまれない気持ちでいっぱいになった。


< 177 / 267 >

この作品をシェア

pagetop