正しい男の選び方
「んー、お姉ちゃんはお肉は食べないの、ベジタリアンだから」
「えええ! お肉食べなくていいの! いいなぁ。
私なんか、いっつもお肉をしっかり食べなきゃいけません、ってママに怒られてるのに」
何、それ、私、悪い見本になってる? もう、勘弁してよ……
葉子は慌てて付け足す。
「そうだね。あなたはまだ小ちゃいから、大きくならなくちゃいけないもんね。私はもう大きくなっちゃったから」
「いいなあー、大きくなったらお肉食べなくてもいいんだー。早く大きくなりたいなぁ」
「じゃ、そのお皿のお肉、ちゃんと食べないとね」
葉子が言うと、女の子は頷いて、隣りに座っている母親らしい人に話しかけた。
「ママ、大きくなったらお肉食べなくていいんだよ」
「何、言ってるのよー、何でも食べなきゃだめなのよ」
「でも、このお姉ちゃん、お肉食べないんだって」
「え?」
そのお母さんらしい人が葉子の顔をじっと見つめる。それから柔らかな笑みをたたえて葉子に語りかけた。
「うちの娘、好き嫌いが多くて本当に大変なんです」
「……」
「今でもお肉を苦手にしてて」
「……」
「体も小さいから心配してるんですよ」
葉子はいたたまれない気持ちでいっぱいになった。