正しい男の選び方

「さっきはありがとう」

葉子は食器をさげながら浩平に言った。

「この前はこっちが助けてもらったからな。借りは返せた?」

葉子は爽やかに微笑む浩平にドキッとする。
さっきこの人が私を抱きしめたんだ……浩平を見ながら思い出しているとなぜか胸が苦しくなってくる。平静でいられない自分が落ち着かなかった。

浩平は何事もなかったように淡々とみなが下げてくる食器を手早く片付けていた。

「どうしたの? あ、そこのグラスとって。食洗機に入れちゃうから」
「あ、うん……」

浩平はデザートとコーヒーの用意をしていた。葉子も何となく手伝っていると、ナナちゃんがお皿を持ってやってきた。

「ほら、食べたよ」

自慢げにからになったお皿を浩平に見せる。浩平はふふと笑ってナナちゃんのお皿を受け取った。

「ちょっと待っててね」

浩平が持って来たのは、マカロンの詰め合わせだった。

「ママに内緒だから一つだけね。好きなのとっていいよ」
「うわー、どれにしようかな……」

ナナちゃんは目を輝かせて選んでいる。迷いに迷った末、ラズベリー味のマカロンをとった。
ぱくぱくっと食べてしまうと、ありがとーといってナナちゃんは行ってしまった。

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