正しい男の選び方
「あー、じゃ、パンプキンパイ? せっかくだから。食べたこと、ないし」
「コーヒー飲む?」
隣りにいる葉子が聞いた。
「もらおうかな」
「ミルクいるよね?」
葉子は、政好に確認してから冷蔵庫の中の牛乳を取り出して、ミルクピッチャーに移す。
それから、ミルクを入れたコーヒーを政好に渡した。
「どうぞ」
「……」
政好がむっつりしてる。
「どうしたの?」
「……やけに手慣れてるよな」
「え?」
「さっきから、自分ちのキッチンみたいに動き回ってるじゃない?」
「え!?!?」
「初めてじゃないよな、ここに来るの」
「…………」
コーヒーを注ぎに来ていた店長の奥さんが、二人の話を小耳に挟んだのか、無邪気に口をはさんだ。
「あら、だって、長澤さんがこの前のハロウィンのパーティーを取り仕切ったのよね?」
「この前のハロウィンパーティー?」
政好が怪訝そうなかおをして聞き返した。
まずいっっ!! 葉子が口を開く前に、奥さんがさらりと政好に答える。
「星野さんが自宅でパーティーを開いた時に、トラブって、ワールドフーズで食べ物を用意したのよ。
その時、長澤さんが大活躍したって、聞いてない?」
「……ああ、そ、そうでしたね」
政好は奥さんに相づちをうちながら、葉子の手を引っ張って行った。