正しい男の選び方

「あー、じゃ、パンプキンパイ? せっかくだから。食べたこと、ないし」

「コーヒー飲む?」

隣りにいる葉子が聞いた。

「もらおうかな」

「ミルクいるよね?」

葉子は、政好に確認してから冷蔵庫の中の牛乳を取り出して、ミルクピッチャーに移す。
それから、ミルクを入れたコーヒーを政好に渡した。

「どうぞ」

「……」

政好がむっつりしてる。

「どうしたの?」

「……やけに手慣れてるよな」

「え?」

「さっきから、自分ちのキッチンみたいに動き回ってるじゃない?」

「え!?!?」

「初めてじゃないよな、ここに来るの」

「…………」

コーヒーを注ぎに来ていた店長の奥さんが、二人の話を小耳に挟んだのか、無邪気に口をはさんだ。

「あら、だって、長澤さんがこの前のハロウィンのパーティーを取り仕切ったのよね?」

「この前のハロウィンパーティー?」

政好が怪訝そうなかおをして聞き返した。
まずいっっ!! 葉子が口を開く前に、奥さんがさらりと政好に答える。

「星野さんが自宅でパーティーを開いた時に、トラブって、ワールドフーズで食べ物を用意したのよ。
 その時、長澤さんが大活躍したって、聞いてない?」

「……ああ、そ、そうでしたね」

政好は奥さんに相づちをうちながら、葉子の手を引っ張って行った。



< 181 / 267 >

この作品をシェア

pagetop