正しい男の選び方

人気のないところに連れて行く。

「……聞いてないんだけど? どういうこと?」

「あー……え……と、ほ、星野さんが頼んでたケータリングがトラブっちゃって……で、ウチで食べ物出したのよ」

葉子はかなりしどろもどろだった。

「仕事?」
「もちろん、仕事、仕事。店長と一緒にやったし……」

「じゃあ、何でオレに内緒にしてたの?」
「いや、あの、仕事とはいえ、星野さんの家に行くとか聞くとあんまりいい気はしないかなー……って思って……」

「他の人から聞く方がいい気はしないけど?」
「……だよね。ごめんなさい」

謝りながら、あといくつ政好に内緒にしてることがあるんだろう、と葉子は自己嫌悪でいっぱいになっていた。

政好が葉子を抱きしめた。

「心配だよ、アイツに取られそうで」
「そんなこと、あるはずないじゃない。
 あんな、贅沢好きの浪費家で傲慢な女たらしなんか……」

惑わされたりしない。
いくらキスがキモチイイからって……。私のことベジタリアンだって小馬鹿にするし、環境のことなんか全く考えないイヤなヤツだし。
プライベートジェットなんてとんでもない、あんなの大キライだし。
女とみれば口説くくせに、ちょっとふられたぐらいでバカみたいに落ち込んだりして……自業自得なのに。
しかも、子どもまでたらしこむし……。

政好はすごく素敵な人だ。信念があって、環境のために自分も行動を起こしている。葉子はそういうところを何よりも尊敬していた。
それに、責任感もあるし、行動力もある。そして、穏やかでいつも冷静だ。ちょっとシャイだけど、誠実だし、浮気なんて絶対しないだろう。

政好といればきっと幸せだ。

葉子は自分に言い聞かせている。
いくらドキッとするようなことがあったって、そんなの一時的な気の迷いでしかないんだから……。
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