正しい男の選び方

政好は、そのまま葉子を抱きしめていた。

するといきなり、

「ナナちゃん、ここ?」

ガチャリとドアを開けて、浩平が首を覗かせた。

「あ……」

葉子は浩平と目が合う。
浩平はにやりと笑って

「邪魔したな。ごゆっくりどうぞ。このドア鍵かかるから」

と言って出て行った。

浩平に見られた……。
いや、だからどうだというのだ? 

政好がキスをしようとしてきた。

「……やめてよ、こんなところで」

葉子は政好を押し返した。

「やっぱりオレとはできない、ってこと? アイツに見られるから?」

政好の思わぬ反撃だ。

「……違うわよ。店長だって、小さい子だっているのに、みっともないこと出来ないでしょう?」
「……ホントにそう思ってる? それが理由?」

浩平の顔が頭にちらつく。

「当たり前じゃない」

浩平の顔を振り切るように葉子は政好を見つめた。それは、まるで、葉子の意思を表明しようとしているかのような強い視線だった。

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