正しい男の選び方
大体、他の社員やパートさんたちが忙しそうに働いているのに、自分だけ先にあがるなんて出来ない。
だから、葉子は、そのまま働き続けようとしていると、店長がものすごく気の毒な顔をして、どうかあがるように、と懇願する。
店長と浩平の間に葉子の知らない取引が行われていることは明らかだった。
しかも、店には、ルーシーが迎えにきて待ち構えている……
葉子に自由はなかった。
8時から4時半まで働き、4時35分には、ルーシーと浩平のマンションへ戻る、というスケジュール。
そこから、夜12時過ぎまで、みっちり勉強があった。
しかも、絶望的な顔をしたルーシーの提案により、三日目から昼休憩の30分も先生が出張して英語の勉強をすることになった。
葉子は一人で一歩も外へ出させてもらえなかった。
唯一、外に出れるのが、ルーシーと一緒に近所を歩く時だけだった。
そのときも、葉子が歩くとなりでルーシーが会話を強要する。
ルーシーのスパルタ式の勉強は情け容赦なく、葉子は5日目の夜は英語で夢を見た。
もちろん、うなされてる夢。
ルーシーと浩平が高笑いをしながら、葉子の英語をばかにするのである。
パーティー会場でスピーチに失敗して、嘲笑されてる夢も何度もみた。
「ひどすぎる。これって、人権侵害と言っていいレベルじゃない?」
葉子は浩平とルーシーに泣きついたが、浩平は、肩を大きくすくめて、
「ワタシ、ニホンゴ、ワカリマセーン」
とか言う。