正しい男の選び方
そのままさっとフライパンを拭いて、バターと玉ねぎ、マッシュルームを加えてソースを作り始める。
慣れた手つき。
「よく料理するの?」
やけに手際がよかった。
浩平はフライパンから目を離さずに答える。フライパンを手にしているその姿は真剣そのものだった。
「まあね。こうやってゆっくり美味しいものを食べるのが好きなんだ。
旨いものを食うと、好きな人に食べさせたくなるだろう? ウチで腕をふるって食べてもらうのがオレの楽しみってわけ」
機嫌の良い笑みを見せていた。
「……ふーん。美味しいワインに美味しい食事、そして彼女も美味しく頂こうってわけね」
葉子は皮肉をきかせたつもりだったが、浩平は「惜しい!」と小さく叫んで、からりとした屈託のない笑みを見せる。
「美味しく頂かれるのはオレのほう」
そういって片目をつぶってみせる。葉子は、人なつこい笑顔に一瞬ドキリとした。
浩平は、瞬く間に出来上がったソースを肉の上にかけて、ステーキを完成させた。皿を手早く窓際のテーブルに運ぶ。
テーブルにはすでに用意が整っていた。
まるでレストランみたいにテーブルがセッティングされている。
テーブルの上には一輪の花とろうそくが添えられていた。バゲットといくつかの前菜もすでにテーブルの上に置いてあった。
「冷蔵庫からサラダ出してくるから、座ってて」
浩平は椅子を引いて、葉子を座らせる。何から何まで手慣れていた。
一体今まで何人の女をここに呼んだんだろう……?
浩平の誘導で椅子に座りながら葉子は考える。流れるような動作は、余程経験を積んでいるに違いなかった。