正しい男の選び方
「じゃあ、改めて乾杯しよう」
席に着くと、浩平はワインを注ぎ足した。
葉子の目の前には、立派なステーキの皿が置かれている。
「私、本当に食べないわよ、ステーキ」
「……残念だなあ、一口だけでもどう? 旨いよ」
「残念だけど」
葉子は首を振った。
「でも、ワインはいけるよな?」
「もう飲んでるじゃない」
「だな。じゃ、改めて乾杯」
浩平はグラスを持ち上げた。
葉子もグラスを持ち上げてグラスを近づける。カチンと心地よい音が鳴って二人は乾杯した。
天井から床までの一面ガラス張りになっている窓からは、東京の夜景がどこまでも広がっている。
遠くにスカイツリーが色を変えていくのが見え、すぐ近くには東京タワーのライトアップが目に入ってくる。
実に、眼下一面きらきらとまばゆい光の海だった。
「全く壮大なムダよね……」
葉子が憂鬱そうな声をだす。
浩平は、おや、という顔をした。
葉子は窓の外を一瞥してから浩平の顔に視線を戻す。
「スカイツリー。あんなに明るくする必要あるのかしら。
スカイツリーのライトアップなんて……資源の無駄遣いもいいとこだわ」
葉子の吐き捨てるようなセリフに、一瞬呆気に取られた後、浩平はあっはっはと大口をあけて笑いだした。
「ここで、何人となく食事をしたけど、スカイツリーのことをそんな風にこきおろしたのは君が初めてだ」