正しい男の選び方
葉子はいかにも、というように大きなため息をつく。
「まあね。大抵の女は『ステキー』ってうっとりした目で言うんでしょうね。
当ててみましょうか? ジャンバラヤを一緒に食べた女、『スカイツリーは遠くから眺めてるほうがずっとロマンチックね。きらきら輝いて素敵』とか何とか言ったんじゃない?
カレーの女は、きっと潤んだ目をキラキラさせて『ステキ。夢みたい……』ってね。ああ、うっとり目を閉じてたかもしれないわね」
葉子が生真面目に解説していくのを聞きながら、浩平がくくくとお腹をよじる。
「そしてステーキの女は『残念だけど、私、ベジタリアンなの。スカイツリーの電気、消しちゃえばいいのに』ってツンとすまして、不機嫌な声で言うわけだ」
浩平が葉子の口調を真似る。それから、堪えきれないように、ぶほっと吹いたかと思うと、げらげらと笑った。
「そんなにおかしなこと、言った覚えないんだけど」
むっとして葉子がワインをぐっと飲み干す。
浩平は涙をながしながら、葉子のグラスにワインを注いだ。
「ごめん、ごめん。その、君の偏見に満ちた、凝り固まった考えはどこから出て来てるわけ」
葉子は絶句する。
さっきから……どこまでも失礼なヤツだ。
葉子の顔はさらに不機嫌になった。またワインをごくごくっと飲む。
「偏見? 私は、ただ、事実を指摘しているだけよ。耳の痛いこと言われたからって、偏見なんて言うべきじゃないわ。
特にスカイツリーの明かりなんて全く必要ないじゃない。ただのムダ。
地球の温暖化のことを考えたら、こんなことしてる場合じゃないのよ」
葉子の顔は大真面目だった。