正しい男の選び方

(どうしてカナが?
 どうしてなんて、考えられる事はただ一つ)

葉子は、ルーシーに気分が悪いからと言って先に帰ってしまった。

パーティーは素敵だった。

葉子は、自分があんなスピーチを人前でやってのけることができるなんて思ってもみなかった。ずいぶん緊張したし、途中で浩平に助けてもらったけど、それでもちゃんとやり遂げる事ができた。

見知らぬ老婦人や紳士とも楽しいひと時を過ごせた。
綺麗に着飾って自分が自分じゃないみたいで。……平凡な自分には分不相応のおとぎ話の中にいるようだった。

あんなに心踊る気持ちになったのは初めてだった。

なのに……

何で、今、なんで自分はこんなに涙を流しているんだろう。
悲しくて、惨めで胸がつぶれそうだ。

しばらくホテルでぼうっとしていると、浩平がいきなり部屋に入って来た。

「何もないよ」

浩平はまっすぐ葉子のところに近づいて来て、開口一番にこう言った。

「え?」

「カナとは何もない。寝てないし、付き合ってもいない。この前別れを告げられてから、そういうことは一切していない」
「……」

「……何か言うこと、ないの?」

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