正しい男の選び方
お昼を食べ終わると、政好は満ち足りた顔で「ごちそうさま」と言ってくれた。
何にしても、自分が作ったものを美味しそうに食べてくれる人がいるのは嬉しいことだ。
政好を見て、頑張って作ってきたかいがあったなーと、葉子は秘かにほっこりした。
政好はブランケットの上にごろんとなって空を見上げている。
「さっきの人ってどういう知り合い?」
政好が唐突に聞いてきた。
「え……と? んー」
どういう知り合いか、と問われると説明に困る。
「私が勤めているスーパーが入っているタワーマンションに住んでいる人……でいいのかな」
何かややっこしい説明である。
「マンションの住人なんて何人もいるのに、どうやって知り合ったの?」
鋭いツッコミ。
「常連さんで。ほとんど毎日顔を合わせてるから、何となくスーパーで言葉を交わすようになって」
嘘……ではない、はずだ。
「なるほどね。何となく、長澤さんの友だちって感じがしないから、ちょっと不思議に思った」
「友だちなんかじゃないですよー。ただの知り合い」
「知り合い」と言う時に、妙な力が入る。
「あんなヤツ、まあ身勝手で浪費家で、一番お近づきになりたくないタイプです」
「車もスゴいのに乗ってたよね」
「ホント、排気ガスばっかだすような、あんな車、害悪以外の何モノでもないですよね。何考えてんだか」
「何も考えてないんだよ、自分のこと以外」
気がつけば、葉子は浩平の悪口で、政好と意気投合していた。