正しい男の選び方
それから、二人は、公園でゆったりとした時を過ごす。
葉子は、食後のコーヒーが欲しくなって、近くにコーヒーを買いに行く。政好が用意してくれた二つのマイ・マグカップを手にして。
葉子の分を用意していた政好に、葉子はちょっと驚いた。
「その……やっぱりヘン過ぎるでしょうか? 馴れなれしかったかな……?
長澤さんなら、あの……わかってくれるかな、と勝手に思ってしまって……と、特別な人だし……」
真っ赤な顔で一生懸命説明する。
政好は、「特別な人」ってところで、舌を噛んだ。……可愛い。可愛いすぎる。
もう、葉子のきゅんきゅんは止まらない。
「今度、ペアのマグカップ用意してもいいですか?」
いたずらっぽい目をして言うと、政好は嬉しそうに口を横に広げた。
コーヒーを買ってくると、政好はブランケットの上にごろんとなって、論文を読みふけっている。
葉子が戻ってきたのにも気づかないほど集中していた。
真剣な横顔。
邪魔したくなくて、それに、きりりとしたその顔をずっと見ていたくて、葉子はしばらくじっとしていた。
ふいに、政好が顔をあげたら、葉子と視線がぱちんとぶつかった。
政好が優しい笑顔を見せる。
「ごめん。読みふけってて全然気づかなかった」
「ううん、邪魔したくないなーって思って見てたから」
なんだか会話が面映い。
「もう少しだけ読んでもいい?」
「もちろん」
葉子は、政好の隣りに座る。
秋の風がやけに爽やかだった。