スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―


俊くんはぎこちない表情をして、視線をさまよわせていた。

今日は早じまいできるはずだったのに、遅くまで付き合わせちゃって申し訳ない。


「ごめんね、俊くん。また迷惑かけてる」


「いや、かまわないよ。なぎちゃんは『ごめん』が多すぎ。それより、らみちゃんだっけ、夕飯も食わずに寝てしまって、大丈夫だったかな?」


ちょうど食べ終わった頼利さんが箸を置いた。


「明日の朝、腹が減りすぎて、まともに動けねぇかもしれねえ。らみはやたら動き回るのと、黙って座ってるときは体を緊張させる癖があるせいで、チビなくせによく食うんだ」


その言葉、聞き流せなかった。


「体を緊張させる癖、ですか?」


「何だ、先生、気付いてなかったのか」


「黙って座ってるときって、授業中もそうですよね?」


「ああ、たぶんな。らみは基本的に、じっと動かずにいるのが苦手なんだ。黙って座っとくことも母親から仕込まれてるが、自分で自分を押さえ付けるみたいに、全身に力を入れてる。

音楽かけてやると、リズムに合わせて動くから、力が抜けて楽になるらしい」


「そういうこと、ちゃんと教えてくださいよ! わたしは30人の子どもたちを相手にしてるから、気付いてあげられないこともたくさんあるんです!」


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