スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
思わず座卓に身を乗り出して、頼利さんに抗議した。
子どもたちの気になる点、難しい癖、体や心に関する心配は、できるだけ全部、把握しておきたい。
もちろん、授業中にはおとなしく座っててもらわなきゃいけないし、音楽をかけるわけにもいかない。
らみちゃんのために特別な何かをしてあげられるわけじゃない。
でも、授業の途中で軽い体操を挟むとか、小さな工夫をすることくらいならできるから。
頼利さんが、唇の片方を持ち上げる笑い方をした。
「威勢のよさが戻ってきたな。食って元気になったってとこか。ガキみてぇな女」
「俊くんのごはん、おいしいんだから、元気出るのも当たり前ですっ」
ガキでいいもん。
小学校の先生だもん。
わたしは退職まで小学校を卒業できないのさ。
半永久的に小学生なのさ。
俊くんはくすぐったそうにひとしきり笑った後、居酒屋のにいちゃんの顔をして、頼利さんに尋ねた。
「混ぜご飯のおにぎりや卵焼きなんかのちょっとしたおかずのお弁当、よかったら、らみちゃんのために持って帰りませんか?」
「そいつは助かる。おれもろくなもん作ってやれねぇから。特に朝は時間が限られるし」
「じゃあ、取ってきます。もう出来上がってるので」