スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―


「あ、あの……送っていただいて、ありがとうございました」


「別に、らみを迎えに行くついでだ。たいした手間でもねぇよ」


シートベルトを外す手が震えている。

心臓があまりにもドキドキして、全身がふわふわしている。

わたしは、夢の中を歩くような心地で車を降りた。

振り返って、ドアを閉める。

頭を下げて上げたら、さっさと行け、と頼利さんがジェスチャーした。


玄関に駆け込んでドアを閉めて鍵を閉めて、そのままずるずるとへたり込む。


ダメだ。

反則だ。

保護者さんのくせに、あんなのずるい。


「夏までの、辛抱……」


らみちゃんのおかあさんが長期出張から帰ってくるまで、という意味だ。

そしたら、頼利さんは、らみちゃんの保護者役じゃなくなるから。


だけど、こんなの許されるんだろうか?

教師のわたしが、一時的にではあっても教え子の保護者だった人と、恋に落ちるなんて。


まだ落ちてない。

まだ引き返せる。

わたしは、世間に後ろ指差されて子どもたちに悪影響を与える人間には、絶対になりたくない。


電源を落としていたスマホをオンにする。

起動を待って、さらに十数秒。

メールと電話の新着通知が合計8件。

全部、加納からだ。


危うい恋に走るよりは、いっそのこと。


わたしは、感傷的なタイトルのメールを、受信した順に開いていった。


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