スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―


「小難しいことをやりたがるジャズプレイヤーも、いるにはいるが、それがそのプレイヤーの『口癖』ってだけだ」


「口癖?」


これは受け売りなんだが、と頼利さんは前置きした。

ウォーターサイド・ジャズ・オーケストラのプロデューサーさんが言っていたことらしい。


「ジャズってのは、音楽の『ジャンル』じゃなくて『表現技法』だ。

言い換えれば、ジャズっていう『言語』を使って自分を表現した音楽が、ジャズと呼ばれる。

おれがさっき基礎と呼んだ技術は、『語彙』に当たる」


「基礎が固まってるというのは、語彙をたくさん持ってるということですか?

その語彙の使い方、要するに、ジャズというしゃべり方を習得したら、わたしもジャズで自分を表現できるようになるんですか?」


「そういうことさ。謎かけみたいに小難しいしゃべり方をしたがるやつって、いるだろ? そんなやつがジャズを演奏すれば、小難しい口癖ばっかりのアレンジになる。

いつでも笑ってるようなやつなら、それはそれはにぎやかな演奏をするだろうさ」


「ジャズは言語だから、自分語りが、そのまま音楽になる」


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