スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
スウィングは、1拍の中の強弱やスピードに、揺らぎやうねりがある。
頼利さんが例に挙げたのは、意外なものだった。
「らみが言ってたんだが、大縄跳びの縄を回すリズムはジャズのスウィングに似てるんだとさ」
「大縄跳び? って、確かに体育の授業中に、らみちゃんが言ってました。スウィングしててジャズみたいって」
体育の時間、いつもやってる大縄跳びを思い出す。
縄の軌道は、回すわたしから見たら円であって、正三角形じゃない。
ぶん、と振り下ろした大縄を低く通して、ふわり、と頭上を過ぎていく大縄に再び、ぶん、と力を込める。
そこに揺らぎやうねりがある。
スウィングって、あんなイメージか。
ぐるんって1周の中に、アクセントと脱力があって。
じゃあ、鍵盤で再現するなら、こんな感じ?
頭に描いた大縄跳びのスウィングで、少し濁らせたハ長調のメロディを弾いてみる。
その途端、『渚のアデリーヌ』がガラリと違う表情で踊り出したから、びっくりして手を止めてしまった。
何だこれ。
今の、ほんとにわたしが弾いた?
何というか、えらくカッコよかったんですけど。
頼利さんが喉の奥で笑った。
「どうしてやめるんだよ? その調子でやってみな。
原曲の楽譜どおりの終止記号で終わらなくていい。気の済むまで、うまくできたと思えるまで、無限ループで弾き続けてみりゃいいさ。とことん付き合うぜ」