スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―


奴隷の身分から解放されても、黒人たちの地位は低かった。

下僕のような彼らの音楽は、初めは、白人たちにとってペットの芸に近いものだった。


酒場やレストランで優雅に飲み食いする白人たちは、楽器のできる黒人たちにBGMとしてジャズを演奏させた。

そのスタイルが定着していくにつれ、ジャズは悲惨なワークソングから離れて、お酒に似合う楽しげな音を奏でるようになった。


楽しい音を演奏しながら、暗い気持ちになるミュージシャンはいない。

普段の暮らしはつらくても、演奏中は楽しくなれる。

そんな黒人ミュージシャンを見ているうちに、白人たちもジャズをやってみたくなった。


ジャズバンドに白人たちが加わるようになると、クラシック音楽のノウハウやスキルがジャズに取り込まれるようになる。

現代のジャズが持つ巧妙な華やかさと力強い泥臭さの2つの側面はそれぞれ、クラシック音楽とワークソングに由来しているんだ。


「話が回り道しちまったが、本筋に戻ると、親父は形から入るもんでな。

底辺からスタートしたジャズを学びに本場に行くなら、自分も苦労してのし上がってみろと、おれはほとんど身ひとつで放り出された。行った先は、ニューヨークだった」


< 196 / 240 >

この作品をシェア

pagetop