スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
「ロサンゼルスじゃなかったんですね。音楽の町、芸能の町っていったら、ロスのイメージなんですけど」
「そいつは映画の影響だな。商業的なことを言えば、ロスに行ったほうが金になる仕事にありつける。
開放的な気候のせいもあるだろうが、ロスのミュージシャンはチャラい仕事で儲けまくって豪遊してるイメージだ。テレビや映画の仕事はギャラがすげぇから」
「あんまりいいイメージじゃないですね」
「おれはそういうのが嫌いってだけだ。悪いとは言わねえ。商業的なロスに比べて、ニューヨークは芸術肌の連中が集まってる。しかも、世界じゅうから。
とんでもなくレベルの高い場所に、英語もできないおれは飛び込んだ。そりゃ、苦労する以外あり得ねぇよな」
最初の半年くらい、何をやっていたのか記憶がないらしい。
一応どうにかバイト先を見付けて、狭くて安いアパートにルームシェアで住んでいた。
肝心のジャズは、なかなか進展がなかった。
ウォーターサイド・ジャズ・オーケストラが拠点とするライヴハウスに、彼らの演奏を聴きに行ったことが転機になった。
ライヴの後、つたない英語で身の上を語る頼利さんに、プロデューサーさんが突然、日本語で話し掛けたんだ。