スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
「今からそちらに向かいます。きちんと説明するので、わたしの話、聞いてください」
〈……いいだろう。待っているから、気を付けて来るといい〉
感情を押し殺したような声だった。
逆上するんじゃないかと、急に不安が湧き起こったけど、今さら後には引けない。
わたしは電話を切った。
頼利さんが眉間にしわを寄せている。
「大丈夫なのか?」
「今ならちゃんと話せます。加納に絶対できないって言われてたジャズピアノ、わたしもやればできそうだって、その手応えが自信になりました。今のわたしは、加納も怖くないです」
「だったらいいんだが」
「それでですね、上條さん、お願いがあります。一緒について来てください。一緒に来て……わたしの恋人役、演じてもらえませんか?」
言いながらメチャクチャ恥ずかしくなったけど、加納のアプローチを断る最強の手段がこれだという気がする。
恋人がいるから、あなたとは付き合えません、って。
目を見張った頼利さんが、楽しそうに笑い出した。
声を殺して、くつくつと、肩を震わせている。
「マジで言ってんのか? ガラの悪いおれが相手でいいのかよ?」
「だって、ほかにいませんし」
「消去法か。ひっでぇ」