スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―


わたしと同じく、まずアイスティーで口を湿した頼利さんが、余裕たっぷりに財布から名刺を2枚、取り出した。

もちろん、両手で差し出すなんてことはしない。

まとめてつまんだ2枚を、加納の鼻先に突き出した。


「好きなほう、取れよ。連絡先は同じだ。肩書が違うだけ。片方は楽器店の店長。もう片方はプロのドラマー」


「楽器店? ドラム? なるほど、だからそういう社会人らしくもない崩れた格好をしているのか。

きみの職業など、どうでもいい。きみに何の権限があってここにいるのか、説明してもらおうか」


「官僚ってのは、ミュージシャンみてぇに不良な輩と同じくらい、無礼な物言いをするもんなんだな。

それとも、あんたが例外か? 賢い大学を出てる割に、想像力も働いてねぇようだしな」


「何が言いたい?」


「普通の人間なら、おれとなぎさの関係くらい想像つくだろって話だ。あんたが現れるたび、どうしておれがなぎさをさらっていくと思う?」


わたしは頼利さんの横顔を見上げた。

自信満々な笑みが頼もしすぎて怖い。

なぎさって、いきなり呼び捨てしないでよ。

どこまで話を膨らます気ですか、あなたは。


< 209 / 240 >

この作品をシェア

pagetop