スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―


飛梅は俊くんの実家で、俊くんちのおじさんが大将を務める居食屋だ。

我が家はこのすぐ裏手にあって、料理のできないわたしはほとんど毎日、飛梅で夕食をいただいている。

店構えは大きくないけど、平日でもバイトさんが2人いるくらい繁盛している。


美香子先生は去年、わたしと同じタイミングで喜多小学校に着任した。

歓迎会で話してみたら居心地がよくて、家も近いことがわかって、それ以来しょっちゅう一緒に飛梅に来ている。

というか、平日はほぼ毎日、飛梅のカウンターの隣同士で晩ごはんしてるかも。


わたしは手短に、らみちゃんちへの突撃家庭訪問からタクシーに飛び乗ってライヴハウス・デュークに至り、ウォーターサイド・ジャズ・オーケストラなる凄腕ビッグバンドの演奏を聴くことになった経緯を説明した。

俊くんも美香子先生も笑って聞いてる。


「笑いごとじゃないんだってば。らみちゃんのことをおうちの人に相談しようと思ったのに、謎のイケメンが出てきて煙に巻かれて、相談どころか家庭訪問の日程取りすらできなかったんだよ。どうすればいいの、この状況ぉ……」


トマトジュースとサラダ、香の物にお味噌汁と、手際よく出してくれながら、俊くんは笑いを引っ込めない。


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