スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
俊くんがまず出してくれた温かいお茶を飲むと、ふーっと心が落ち着いた。
頼利さんと美香子先生に、どうにか笑いかける。
「お騒がせしちゃって、ごめんなさい。あの人は加納幸雅っていって、大学時代にわたしが付き合ってた人なんです。
加納はわたしの1つ上だから、今は30歳ですね。わたしが大学1年のころから加納が大学を卒業するまでの3年間、付き合ってました」
美香子先生が眉を曇らせている。
「元カレと再会してあんなに真っ青になるなんて、いい別れ方をしなかったのね? なぎさ先生、幽霊でも見たような顔をしていたわ」
「別れ方は、まあ揉めたけど、普通じゃないかな。それ以前の付き合い方がよくなかった」
「付き合い方? 浮気とか、暴力とか、借金とか?」
「そういうタイプの問題じゃなくてね。まあ、言葉の暴力はあったかもしれないけど。
でも、基本的にはいい待遇してもらってたよ。自分ひとりじゃ行けないようなレストランに連れていってもらったり、贅沢な旅行をさせてもらったり。でも、わたしは合わなかった」
「贅沢な待遇に、逆に疲れてしまった?」
「求められる理想が高すぎたの。あの人といると、自分が人形になってくのを感じた。あの人は彼女がほしいんじゃなくて、自分の理想のとおりに動く人形がほしいんだなって。
でも、それを理解するまでに時間がかかって、そのぶん長らく苦しい思いをしてた」